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死体洗いのアルバイト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

死体洗いのアルバイトとは、病院にまつわる都市伝説の1つ。

医学部歯学部では、その養成カリキュラムの中に遺体解剖実習が必ず組み込まれている。この都市伝説は、その解剖実習等に際し、献体を解剖前に洗浄・保存(固定)する作業が必要となるため、病院は高額な時給でアルバイトを雇いこの作業を行わせているという話。話には幾つかバリエーションが存在し、洗浄前の献体がホルマリン漬けのプールに沈められていたり、洗浄する対象が献体ではなくベトナム戦争朝鮮戦争で戦死した米兵であったりする。また「洗浄」ではなく「死化粧」(エンバーミング)というバリエーションもある。

目次

[編集] 起源

大江健三郎の小説『死者の奢り』(1957年)が初出とする説が純文学畑を中心に広まっている。しかし、この話を大江自身が創作したのか、聞いた話を小説の素材に活用したのか、どちらかは判然としない。大江自身もそのあたりは口を濁している。このように初出に関する真偽は不明だが、大江のこの小説がこの話を都市伝説として広く流布する一因になったとされる。しかし、この起源説には異論もある。『死者の奢り』の中で書かれているのは「死体洗い」ではなく「死体運び」であり、また作品中で死体を沈めているプールの中の液体も一般に流布しているホルマリンではなくアルコールである。これだけ細部が異なる話が流布するきっかけとなるとは考えにくいという説を提唱する研究者も存在する。

[編集] 話の内容と実態

「大学の医学部や歯学部では解剖実習用の遺体をホルマリンのプールにつけている、その遺体を洗ったり、浮いてくると棒で突いて沈めるというようなアルバイトがある」などという噂がある。しかしそのような事実はなく、いわゆる都市伝説の1つである。

実際には、「死体解剖保存法」や「医学及び歯学の教育のための献体に関する法律」などにより、解剖用遺体の取り扱いには厳しい制限が設けられている。また、遺体解剖実習に関して厳密に言うならば、医学部生や歯学部生でも監督無しに取り扱うことは違法であり、有資格者である解剖学の教授など専門知識を有する教員の監督管理の下でのみ許されるのである。

つまり、単なるアルバイトが遺体に触れたり遺体をホルマリンプールにつけたりするなどということは違法であり、施設を含めて厳重に処罰されるので現実にはありえないのである。

なお、遺体の保存については、専門の知識を有する者が大腿動脈等から保存液を注入し、一体一体別々に保存庫で保管する。また、ホルマリンに関してはホルマリン中毒の観点から使用量は厳しく制限されており(ホルマリンは揮発性が極めて高く、大量に吸い込むと死に至る)、ホルマリンプールなどはありえない。そのため解剖実習中においては、ホルマリンではなくフェノールなどを振り掛けるのが一般的である。

また、この都市伝説のバリエーションのひとつである「戦死した米兵」に関しても、在日米軍モルグ(死体置場)職員から明確に「そのような事実は存在しない」とのコメントが出されている<ref>西丸與一『法医学教室との別れ』(朝日文庫、1995年)。同書に収録の「困った噂」というエッセイで戦死した米兵の遺体の取り扱いの実態が書かれている。</ref>。

多くの医科大学や大学病院には、現在でもこのアルバイトに関する問い合わせが年に数件来るという。ジョーク的なものとして、電話を取った職員が問い合わせに対し「そんなに給料が良ければ俺がしたいよ!」などと怒鳴った、という話もある。

[編集] 湯灌(ゆかん)

なお、解剖用ではない遺体を洗うアルバイトは実在する(日給1万円~2万円程度)。葬式などで行われる湯灌である。この作業には特に上記のような厳しい制限は行われておらず、実際にアルバイトの者が遺体に触れている。

ただし、湯灌に関しても業者や地域による差はあり「厳粛な行為なのでアルバイトに遺体を触らせるようなことはしない(させない)」という業者や地域も当然存在する。また、湯灌に先立って死亡直後の清拭や死に化粧は看護師が行う<ref>検死を必要とする事案を除く。</ref>が、これに対する手当ては全く出ない。この事を鑑みても、「遺体を扱う忌み事だから高給」と言う一般認識は誤りである。

[編集] 「死体洗い」が描写された作品

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

  • 『死者の奢り』起源説に対する異論。
    • 史都玲沙・服部あゆみ『怖い話をしよう』4巻、探偵の匣 怖い話をしよう研究部会、2000年、同人誌。
    • 史都玲沙・服部あゆみ『怖い話をしよう』8巻、英国犯罪博物館、2003年、同人誌。

[編集] 脚注

<references />

[編集] 外部リンク